(caution) この話には原作のセリフ等が引用されている部分があります。 原作とはなんの関係もありません。 鎧化!
「鎧化(アムド)!」 それは彼にとって戦いが始まる合図でもあったのだと思う。 鎧に身を包んだ身体で彼は常に戦場の矢面に立ち続けた。 いつもいつも全身に激しい傷を負いながら。 「この間の戦いの前に私はこの槍を彼から奪いました。 もう闘って欲しくない・・・ 傷ついて欲しくなかったから・・・」 彼女の声が反芻する。 彼女は何よりも彼を 彼だけの身を案じている。 その鎧を身にまとうたびに彼の傷は増えてゆく。 誰よりも先に敵地へ切り込み仲間を護る盾になる。 そしてそんな日常が確実に彼を死に近づけている。 (もう闘って欲しくない) (もう傷ついて欲しくない) 彼を大切に想うものなら 誰もがそう思うに違いない。 私もその中のひとり。 けれど、ひとつ。 分かったことがある。 同じ鎧を身にまとって戦うと決めたことで。 死にに行きたいわけじゃない。 戦場に赴くということは死をも覚悟の上ではあるけれど。 ただ、護りたいものがあるから この身を盾にして傷ついても 命を懸けて 護りたいものがあるから 戦い続ける。 きっと、そうでしょう? 目を閉じると、 戦場でいつも見てきた 兄弟子の背中が浮かぶ。 弟弟子たち 戦いをともにする仲間たち ネイル村の人々 大魔王の脅威におびえ続ける世界中の人々 すぅ・・・とマアムは息を吸った。 「鎧化(アムド)!!」 それは戦いの合図。 ぎゅ、と拳に力を込めて マアムは相対する敵へ向かって駆けだした。
彼と彼女の決めごと