少しずつ街の風も冷たくなって
それでも心が暖かいのは





『雪花』

「もう、冬だねぇ」 窓の外を眺めながらマアムが言った。 「あぁ」 ヒュンケルはソファに寝そべって本を読んでいた。 「今年は雪、降るかな?」 「どうかな。ここらの地域は気候が安定しているからな」 「そうだね・・・」 マアムはまだ外を見ていた。 色味を失くしていく世界。 空気は冷たく鋭い。 「そんなに雪が待ち遠しいのか?」 「だって、綺麗でしょ。空気もきらきらしてて。世界が白銀に染まるの」 「まぁ、そうだな」 デメリットも多いけどな、とヒュンケルは小さく付け加えた。 「ヒュンケルって冬に似てる」 「?」 「全体的に濃い色がないところとか。髪の色とか、ね」 「そうか?」 「うん、そう」 自信有り気なマアムの笑顔に ヒュンケルは溜息をつくように息を落として小さく笑った。 はぁ、と吐き出した息が白い。 マアムは思い出したように寒い、と言った。 差し出された手をとって、マアムはヒュンケルの隣に寄り添った。 「ヒュンケル、手冷たい」 両手で両手を握り締めた。 「冬だからな」 くすくすと笑う。 「よし、じゃあ、」 マアムは立ち上がって隣の部屋からそれをかき抱いて来た。 「湯たんぽ」 彼女が連れてきたのは湯たんぽ、ではなくて。 2人が可愛がっている愛猫。 マアムのにこにこ笑顔と。 おそらく無理矢理眠りから起こされ 湯たんぽと称された猫の不機嫌そうな顔と。 「暖かそうだ」 「でしょ?」 どこをとってもおかしくて。 自然と頬が緩む。 心がぽかぽかと暖かい。 自分もし冬なら、マアムは春だろう。 ほのぼのとした陽気と 明るい色の花たちと 人々が、自然とゆったりした気持ちになるような、季節。 ぬくぬく湯たんぽを膝の上にかくまって ヒュンケルはそんなことを、思った。
のほほん。